【今月の(仏教)書】いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経[著]伊藤比呂美

【今月の(仏教)書】住職が月1回、棚からひとつかみ、比較的読みやすく、比較的安価で、地方の本屋でも手に入りやすいような「(仏教?)書」を紹介します。住職読了後は、「ぎんなん文庫」へ寄贈しておりますので、どうぞご利用ください。

いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経

(2021年11月30日 第1刷発行/発行所:朝日新聞出版/定価1,800円+税)

[著]伊藤比呂美(いとうひろみ)
1955年、東京都生まれ。詩人。78年、『草木の空』でデビュー。80年代の女性詩ブームをリードし、結婚、出産をへて97年に渡米した後、熊本に住む父と母の遠距離介護を続けていた。2018年より拠点を熊本に移し、2021年春まで、早稲田大学教授を務める。
1999年、『ラニーニャ』で野間文芸新人賞、2006年、『河原荒草』で高見順賞、『とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起』で2007年に萩原朔太郎賞、2008年に紫式部文学賞を受賞。2015年、早稲田大学坪内逍遙大賞、2019年、種田山頭火賞を受賞。『良いおっぱい 悪いおっぱい〔完全版〕』『女の絶望』『女の一生』『読み解き「般若心経」』『閉経記』『犬心』『父の生きる』『新訳 説経節』『切腹考』『ウマし』『たそがれてゆく子さん』『先生! どうやって死んだらいいですか?』(山折哲雄氏との共著)『死を想う――われらも終には仏なり』(石牟礼道子氏との共著)『先生、ちょっと人生相談いいですか?』(瀬戸内寂聴氏との共著)ほか著書多数。

先日、2021年11月14日、NHKこころの時代〜宗教・人生〜「わたしの言葉で語るお経〜詩人 伊藤比呂美」にも出演されていた詩人・伊藤比呂美さんの新著「いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経」。

今までも『読み解き「般若心経」』など、お経の現代語訳に熱心に取り組んでこられ、また併せて仏教関係の著作も多い伊藤比呂美さんですが、新著ではエッセイの他、私たち日蓮宗でも多く読まれる「妙法蓮華経」の如来寿量品第十六、薬草喩品第五、方便品第二、従地湧出品第十五の現代語訳も収録され、さらには朗読CDも付属されています。

・開経偈「今、出遭いました」
・法華経薬草喩品偈「大きな木や小さな木」
・法華経従地湧出品偈(部分)「湧き出したボサツたち」
・法華経方便品(部分)「なぜ仏は世にあらわれたのか」
・法華経如来寿量品偈(自我偈) 「私が目ざめてからこのかた」

NHKこころの時代に出演時も、ご自身が朗読される場面が多く紹介されていましたが、その畳みかける音とリズムに心の高まりを覚え、仏たちが生き生きと躍動感をもって立ち上がってきて、それは普段私たちが唱えるお経とは随分印象が違うように聞こえてきました。

私たちはいつか死ぬのに、なぜ生きるのか?詩人伊藤比呂美さんを通して出てきたことばと、音とリズムは、その答えのない問いに向かい合い、あらためて「それまで生きる」喜びに気づかせてくれるように感じました。ぜひ、声に出して読んで頂きたい本です。