【日蓮聖人が遺した言葉】人の心は時に随つて移り、物の性は境(きよう)によつて改まる。

日蓮聖人が遺した言葉

人の心は
時に随つて移り、
物の性は
境(きよう)によつて改まる。

『立正安国論』/文応元年(1260年聖寿39歳)

解説

=信仰の棹=

今年も、もうすぐ終わります。振り返れば事件や事故が多い一年でした。毎年反省し、来年はよりよい年にしたいと誰もが祈ります。しかし、私たちは同じことを繰り返しているように思えます。
それは、このご遺文に示されたように、せっかく目覚めた決心が時の流れで移ろい、環境の変化によって評価も変わるからです。これは真実を見定めていないから起こることです。例えば今来ている冬服は温かく心地好いものですが、夏に着ると暑くて大変です。冬服が変化したのではなく、時が移ろい環境が変化したので、価値が変わったのです。
 私たちは日々の生活に流され、その時々の価値観に追われています。それが流行なのですが、たまには流れに棹差して止まり、自己を検証する必要があります。なぜならば、どこに流れて行くのか分からなくなるからです。その止まるための棹が信仰です。信仰によって止まって周囲を見渡し、流れを確かめ、方向を見定めて棹に力を込めて進み、よりよい未来に向かって進んでいきたいものです。

『立正安国論』

日蓮聖人が生きておられた鎌倉時代は、大きな自然災害が重なり、幕府も色々な政策を打ち出しますが好転しませんでした。なおかつ蒙古襲来の危機が迫っていました。そんなとき聖人は、社会全体が幸せにならない限り、個々の幸福はないと考えられ、その方策をこの書に示され、幕府へ申し上げられたのです。聖人の苦難に満ちたご生涯を決定づけた重要な書です。

文応元年(1260) 39歳

〜日蓮宗ポータルサイト「今月の聖語」より