【今月の(仏教)書】「わたしは『セロ弾きのゴーシュ』中村哲が本当に伝えたかったこと」[著]中村哲

【今月の(仏教)書】住職が月1回、棚からひとつかみ、比較的読みやすく、比較的安価で、地方の本屋でも手に入りやすいような「(仏教?)書」を紹介します。住職読了後は、「ぎんなん文庫」へ寄贈しておりますので、どうぞご利用ください。

わたしは「セロ弾きのゴーシュ」  中村哲が本当に伝えたかったこと

(2021年10月25日 第1刷発行/NHK出版)

[著] 中村 哲
医師・PMS(平和医療団・日本)総院長。1946年福岡県生まれ。九州大学医学部卒業。日本国内の診療所勤務を経て、84年にパキスタンのペシャワールに赴任。以来、ハンセン病を中心とした貧困層の診療に携わる。86年よりアフガニスタン難民のための医療チームを結成し、山岳無医地区での診療を開始。91年よりアフガニスタン東部山岳地帯に3つの診療所を開設し、98年には基地病院PMSを設立。2000年からは診療活動と同時に、大旱魃に見舞われたアフガニスタン国内の水源確保のために井戸掘削とカレーズ(地下水路)の復旧を行う。03年より09年にかけて全長25キロメートルに及ぶ灌漑用水路を建設。その後も砂嵐や洪水と闘いながら沙漠開拓を進めた。マグサイサイ賞「平和と国際理解部門」、福岡アジア文化賞大賞など受賞多数。アフガニスタン政府から名誉市民権を授与。著書に『天、共に在り』『ペシャワールにて』『医者 井戸を掘る』『医者、用水路を拓く』『希望の一滴』など。2019年12月4日、アフガニスタンのジャララバードで凶弾に倒れる。享年73。

アフガニスタンで、ハンセン病の根絶、空爆下の診療所開設、水源の確保、そして用水路の開通など様々な事業に尽力されていた中村哲先生が、2019年12月4日、その地で何者かに銃撃され亡くなられたことは、言葉に言い表せないほど悔しく、そして残念なことでした。

本書は、中村先生が出演したNHK「ラジオ深夜便」の6番組に残されたインタビューをまとめたもので、中村先生がどのようなお気持ちで、どのようなお考えで、各事業に取り組まれていたか、先生の芯の強さと同時に温かみが直接伝わってくるような内容になっております。

中村先生が自らを宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」の主人公ゴーシュにたとえておられたことから、本書のタイトルに使用され、書中にも宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」が掲載されております。自らを多く語ることがなかったという先生の声に触れながら、法華経を深く信仰した宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」を合わせて読み進めていくと、なぜ中村先生がご自身をゴーシュにたとえられたのか、先生を支え続けた奥の奥にあるものに触れることができたような気がしております。

ぎんなん文庫」に置いてありますので、お参りの際は、どうぞご自由にお読みください。