【今月の(仏教)書】NHK出版 学びのきほん はじめての利他学 (教養・文化シリーズ) [著]若松英輔

【今月の(仏教)書】住職が月1回、棚からひとつかみ、比較的読みやすく、比較的安価で、地方の本屋でも手に入りやすいような「(仏教?)書」を紹介します。住職読了後は、「ぎんなん文庫」へ寄贈しておりますので、どうぞご利用ください。

NHK出版 学びのきほん はじめての利他学 (教養・文化シリーズ)

(NHK出版 2022年4月25日)

[著]
若松 英輔
1968年新潟県生まれ。批評家、随筆家、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。2007年「越知保夫とその時代 求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選、2016年『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』(慶應義塾大学出版会)にて第2回西脇順三郎学術賞受賞、2018年『詩集 見えない涙』(亜紀書房)にて第33回詩歌文学館賞詩部門受賞、『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋)にて第16回角川財団学芸賞、第16回蓮如賞受賞。その他の著書に『悲しみの秘義』(文春文庫)、『種まく人』『詩集 美しいとき』(亜紀書房)、『詩と出会う詩と生きる』『14歳の教室 どう読みどう生きるか』『考える教室 大人のための哲学入門』(NHK出版)など。

今月紹介するのは、若松英輔さんによる「NHK出版 学びのきほん はじめての利他学 (教養・文化シリーズ)」。中島岳志著「思いがけず利他」、土井善晴・中島岳志著「料理と利他」、集英社新書の「『利他』とは何か」など、利他という言葉を聞く機会が多くなりました。多くの方が生きにくさを感じる今だからこそ、私たちに必要な視点として「利他」という言葉が浮かび上がってきているようにも感じています。

本書では、自利利他という仏教の視点からみた「利他」、利己主義に対する利他主義という西洋的な視点からの「利他」、儒教の視点からみた「利」、さらには、「利他」に生きた人々の生き様などを通じて、「利他」の輪郭をおおまかに紹介しつつ、さて、この本を読む私たち自身にとって利他に生きるとは何か?を考えさせる、そんな余白のある構成になっているように思います。

もし、利他道というものがあるのであれば、その道へ一歩踏み出せそうな、いや、もう私たちは既にその道に居ることに気づかせてくれるような、そんな利他の入門書です。

ぎんなん文庫」に置いてありますので、お参りの際は、どうぞご自由にお読みください。

他者だけでなく、自分も利する「利他」の本質とは。

「利他」という言葉は「自分ではなく、他者のためにおこなうこと」だと捉えられがちだ。しかし、日本の起源から利他を見つめ直してみると、それとは全く異なる姿が見えてくる。空海の「自利利他」、孔子の「仁」、中江藤樹の「虚」、二宮尊徳の「誠の道」、エーリッヒ・フロムの「愛」……彼らは利他をどのようにとらえ、それをどう実践して生きたのか。彼らの考える利他は、現代とどう違うのか。「自分」があってこその利他のちからとは、どんなものなのか。日本を代表する批評家が、危機の時代における「自他のつながり」に迫る、日本初・利他の入門書。