【今月の(仏教)書】しりあがり寿の死後の世界[著]しりあがり寿

【今月の(仏教)書】住職が月1回、棚からひとつかみ、比較的読みやすく、比較的安価で、地方の本屋でも手に入りやすいような「(仏教?)書」を紹介します。住職読了後は、「ぎんなん文庫」へ寄贈しておりますので、どうぞご利用ください。

しりあがり寿の死後の世界

(2020年9月25日 第1刷発行/発行所:辰巳出版株式会社)

[漫画]しりあがり寿(しりあがりことぶき)
1958年静岡県生まれ。漫画家。1985年『エレキな春』(白泉社)でデビュー。パロディを中心とした新しいタイプのギャグ漫画家として注目を浴びる。「死」をテーマとした作品、幻想的あるいは文学的な作品や実験・前衛的な作品、新聞の風刺4コマ、長編スペクタクルなど、独自の世界観で様々なジャンルの漫画を描き続けている。近年では、映像やアートほか多方面に創作の場を広げている。2014年紫綬褒章受章

[文]寺井広樹(てらいひろき)
1980年兵庫県生まれ。オカルト研究家。文筆家。同志社大学経済学部卒業。怪談の蒐集や超常現象の研究をライフワークとしている

[監修]島田裕巳(しまだひろみ)
1953年東京都生まれ。宗教学者。作家。東京大学文学部卒業、同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。放送教育開発センター助教授、日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員などを歴任。現代における宗教現象、国内外の宗教や新興宗教など、宗教全般について幅広く研究している。

しりあがり寿さんは好きな漫画家の一人で、特に東日本大震災直後に発表された「あの日からのマンガ」も強くお勧めしたいのですが、今回は長く生と死を見つめ続けるしりあがり寿さんによる「しりあがり寿の死後の世界」。しりあがり寿さんの漫画と寺井広樹による文、更に宗教学者島田裕巳による監修で古今東西の死生観が紹介されています。

具体的には、死者の書と呼ばれる「古代エジプト 死者の書」「チベット仏教 死者の書」「日本版死者の書『往生要集』」の三書、「仏教」「キリスト教」「イスラム教」「神道」の死後の世界、加えて霊界の達人と呼ばれる「スウェーデンボルグ『天界と地獄』『霊界日記』」、「ワード『死後の世界』」、「出口王任三郎『霊界物語』」が紹介され、それぞれが比較されてまとめられています。

死んだ後はどうなるのだろう?という問いは、もう数千年前から様々な場所で様々な人がとんでもない時間をかけて考え続けてきたことだろうけれども、いつまで経っても亡くなった人が戻ってきて、その問いの答えを詳細に語ってくれるわけでもなく、結局、「死んだら分かる」に集約されてしまうのかなと思いますが、世界じゅうの人々が古代より長い時間をかけて考えてきた問いのプロセスに触れてみると、多種多様な生き様が見えてくるようでとても面白く感じています。

巻末のしりあがり寿さんによる漫画のラストは以下で終わります。
確かに、そういうことはあるだろうと実感しています。

死後の向こうに
何かがあるという
想いは

死の恐怖を
ほんの少し
やわらげてくれるに
ちがいない